スギ足場板の簡易乾燥スケジュール
-タイムスケジュールによる方法-

足場板として生産されるスギの厚板が、住宅の壁板やフローリングとして使われる例が多くなってきました。これは、最近の健康素材ブームを反映したものと思われます。市場の評価もおおむね良好のようですが、今後需要を伸ばしていくためにはいくつか課題も残されています。その一つは乾燥です。
足場板といえども住宅内装材として使われる以上ある程度の乾燥が必要です。しかし、もともと工事現場の足場用として使われることから、人工乾燥など含水率の管理はほとんど行われてこなかったのが実状です。
そこで、これから人工乾燥をはじめようとういケースも考慮し、スギ足場板の簡易乾燥スケジュールを作成したので紹介します。
1 乾燥スケジュールとは
木材を早く乾燥させるには、高い温度、乾いた空気、大きな風速があればいいのですが、むやみに強くすると、割れ、狂いなどの損傷が生じ、製品をだいなしにしてしまいます。
そこで、損傷をおこさずにできるだけ早く乾燥させるには、最初は緩やかな温湿度条件を与え、材の含水率に応じて次第に厳しい条件に変化させていく方法がとられます。このような温湿度の組み合わせを乾燥スケジュールといい、樹種、材の厚さなどによって異なります。乾燥スケジュールの一例を表-1に示します。
含水率範囲(%) | 乾球温度(℃) | 乾湿球温度差(℃) |
---|---|---|
生~40 | 70 | 6 |
40~35 | 70 | 8 |
35~30 | 70 | 11 |
30~25 | 75 | 14 |
25~20 | 75 | 17 |
20~15 | 80 | 22 |
15~ | 80 | 30 |
(満久 崇麿、木材の乾燥 P281)
材の含水率を把握するには、乾燥させる材の中から適当なサンプル材を選んで乾燥室内に置き、この含水率を桟積み全体の含水率とみなします。サンプル材は、あらかじめ含水率を測っておき、その後の重量の変化で含水率の変化を推定します。
2 簡易スケジュールの作成
乾燥させる材の種類がある程度決まっており、何時間後にどの程度の含水率になるかが経験的(実験的)にわかっていれば、時間経過によって条件を変化させることもできます。
これはタイムスケジュールと呼ばれています。含水率によるスケジュールに比べると、ある程度幅を持たせてあるため精度は悪くなりますが、サンプル材を作って毎日含水率を測るという作業から開放されます。
図-1は、当センターで行った足場板の人工乾燥試験の一例です。
これらの結果をもとに最小公倍数的なものをという考え方でタイムスケジュールの作成を試みました。乾燥温度は、従来型の乾燥機でも対応できるように60℃としました。ただし、温湿度コントロール装置および加湿装置は最低限装備されているものとします。
その結果、決定したスケジュールは、表-2のとおりです。乾燥初期の緩やかな条件は短めに、乾燥後期の厳しい条件を長めにとってあります。初期含水率のばらつきをある程度無視しているので、乾燥末期でイコーライジング(温湿度の設定により乾燥の進んだ材の乾燥を抑え、乾燥の遅れた材のみ乾燥させる操作)を兼ねて仕上がり含水率のばらつきを小さくするようにしました。乾燥時間は142時間(約6日間)になります。
このスケジュールによって乾燥試験をおこなった結果を図-2に示します。
初期の含水率低下が小さく、改善の余地を残していますが、仕上がり含水率は11.9%と内装材としての含水率を十分満足しています。
時間 | 乾球温度(℃) | 乾湿球温度差(℃) |
---|---|---|
6 | 60 | 2 |
24 | 60 | 4 |
24 | 60 | 6 |
36 | 60 | 8 |
46 | 60 | 10 |
6 | 60 | 3 |
3 まとめ
スギ厚板の人工乾燥は今まで事例が少なく、はじめて取りかかる場合は温度設定など不安な点も多いと思われますが、今回作成した簡易スケジュールを用いれば特別な技術を用いなくても乾燥することができます。含水率のばらつきもイコーライジングや調湿を行うことである程度小さくすることができます。
なお、より能率的で精度の高い乾燥を要求される場合は、やはりサンプル材を用いたスケジュールを採用すべきでしょう。
徳島県立農林水産総合技術センター 森林林業研究所 技術情報カード No.18(2000年10月)より
※徳島県立農林水産総合技術センター 森林林業研究所の了解を得て掲載しています。