環境のためにスギ人工林ではダメなのか?-森林の発達段階から考える-

はじめに

 近年の森林づくりは、広葉樹を植えることが良いこととされて、とかくスギ人工林が環境悪化を招いているという風潮です。

問い「環境のためにスギ人工林ではダメなのか?」
答え「いいえ、違います。
   スギ人工林も間伐などをして、時間が立てば環境に良い森林へ誘導できます。」

 ここでは、森林の発達段階という概念から今後の森林施業方法を考察します。

1 森林の発達段階

 森林の発達段階とは、ある森林のタイプが時間とともに構造と機能が変化する様子です。

  • 更新段階-草本類・木本類※の発生により競争が激しい。陽性植物が多く、種の多様性は高くない。
    (※年輪ができる植物を木本類(もくほんるい)、できない植物を草本類(そうほんるい)と定義する。)
  • 若齢段階-競争により優位に立った樹種が林冠※を構成し、種数は激減する。上層の林冠はほとんど隙間がなく、光を遮り、林内は暗く、林床植物はきわめて貧弱になる。また、傾斜地で林床植物が欠乏すると落葉が流出し、土壌構造の発達が阻害される。
    (※林冠とは、森林において、太陽光線を直接に受ける高木の枝葉が茂る部分)
  • 成熟段階-林齢が50年生前後をすぎると、上層木の林冠に隙間がみられ、林内が明るくなり低木層が発達する。また低木層の発達により落葉が定着され、表層土壌への雨滴の直撃も少なくなり土壌構造が発達する。
  • 老齢段階-上層木に枯死木等が出てくると、林内の照度が増して、それまで抑制されていた低木層の高木性樹種が、亜高木、高木へと成長し、高木層から草本層まで階層構造が発達する。様々な動物に多様な生育場所を与え、生物の多様性に優れている。

2 今後の森林施業方法

 つぎに、現在存在するスギ人工林40年生の森林を、今後どのように誘導していくか?次の2パターンで考えてみました。

(1) スギ人工林を皆伐して、広葉樹を造林して育てる。
(2) スギ人工林を間伐・択伐して、長伐期施業を指向する。

 環境に良い森林とは、森林の発達段階においてより老齢段階に近い森林です。スギ人工林40年生の若齢段階の森林が良くないと言って、皆伐して更新段階の森林へリセットしてしまうのは、40年という時間を無駄にしてしまうことです。皆伐して、これから広葉樹を植えても森林が成熟するまで長い時間が必要になってしまいますし、広葉樹施業は長伐期施業と比べ育林コストも過大です。

おわりに

 林業家のみなさん、環境のためにスギ人工林を育成してきたことをダメだと思わないでください。
 スギ人工林を環境に役立つ成熟段階の森林へ誘導するのはこれからです。

 今後、長伐期施業を指向し、スギ人工林40年生の森林を間伐して、短い時間で成熟段階の森林へ誘導しましょう。そのためにも、まずスギ人工林を間伐することで、林内を明るくし、自然に生える広葉樹などの低木層を発達させましょう。

徳島県立農林水産総合技術センター 森林林業研究所 技術情報カード No.29(2001年9月)より
※徳島県立農林水産総合技術センター 森林林業研究所の了解を得て掲載しています。

 

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2011年 10月7日 金曜日  |   関連タグ:
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