林業~作業現場へのモノレールの活用について
はじめに
現在の林業作業現場において、最も労力を要する仕事の一つに、作業現場までの通勤があります。その解消策として現実的なものは、作業道あるいは林内作業車道の開設と、もう一つは乗用モノレールの設置が考えられます。 急峻な作業現場への人員輸送や木材運搬を目的とした林業用モノレールについて、その概要を紹介します。
1 林業用モノレールとは
モノレール(単軌条運搬機)は、昭和40年代前半、柑橘園での運搬労力軽減のため開発されたのが始まりで、昭和60年代前半には乗用型モノレールが誕生し、また、木材運搬を目的として新しく開発された林業専用のモノレールも現れ、各地で導入が進みました。
平成8年には、モノレールによる労働災害を防止するため、「林業用単軌条運搬機安全管理要綱」が労働省から通達として出され、この中に林業用モノレールとは、「地表近くの空中に架設された軌条並びに人及び荷物を乗せて軌条上を走行する車両からなる装置で、林業の現場において人及び荷物の運搬に使用されるもの。(ただし人が搭乗しないものを除く)」と定義されています。
2 構造と安全性
-車両-
モノレールは、先頭に動力車(エンジン、駆動輪、操作装置、制動装置)があり、その後部に乗用台車(1~8名乗り位のもの)や荷物台車が連結されている、という形が基本ですが、各メーカーによって、また使用される形態によってこの構成は変わってきます。
エンジンは、急傾斜地に対応した2、4サイクルガソリンエンジンやディーゼルエンジンのものがあり、登坂能力は概ね45°程度です。
駆動方式は、レールの側面や下側に取り付けられたラックと駆動輪のピニオンピンが噛み合う方式のピ二オンラック式、レールに等間隔の穴をあけこれに駆動輪の突起を噛み合わせる方式のホール式、複数のゴム輪をスプリングで厚着し、摩擦により駆動する方式のローラー式の3つに分けられます。(図-1)
乗用モノレールは急傾斜地を安全に走行するため、本機(動力車+運転台車)には全ての機種に3段階以上の別系統からなる制動装置が備えられており、さらに乗用台車及び荷物台車には、本機とは別系統の2段階の制動装置を装備しています。(図-2)
-レール・支柱-
レール(軌条)の形状は、前述した駆動方式により3つに分けられますが、林業用モノレールでいうところのレールには複数のレール(2本レール、3本レール等)を有するものも含みます。
レールや支柱は、いわば自動車が走る道路のようなものです。従って、いかに自動車の性能がよくても、道路が凹凸では安全性が確保できないように、林業用モノレールにおいて基盤となるレール・支柱は、走行による垂直荷重や遠心力、また振動等に対して十分な安全率を見込んで設計されています。
3 利用特性
林業用モノレールの利用特性としては、次のような点が挙げられます。
- 急傾斜地(40°~45°)でも直登できますから短時間で現場に到着でき、徒歩通勤から解放されます。
- 現場まで歩くことがなくなるため、作業能率の向上が図られます。
- 設置幅は1~1.5m程度で、現場状況に応じて上下左右自在にカーブをとれるため、地形に関係なく敷設ができ、また立木を避けることが容易です。
- 土木機械による掘削等の工事を必要としませんので、林地を痛めません。
- 設置費用は型式、延長等によって違ってきますが、敷設費込みで6,000円~20,000円/mと、作業道とほぼ同じくらいです。
- 設置後の路線、機械の保守管理が比較的容易です。
- エンジンをかければ、あとはレールの上だけしか走りませんから、運転が簡単です。
- 分岐点を設けることによって、広範囲を面的にカバーできます。
4 関係法令など
先に述べた「林業用単軌条運搬機安全管理要綱」で、林業用モノレールの強度、構造、設置、使用についての基準が定められています。
なお、モノレールの運転や保守管理をするには、定められた安全教育を受けなければなりません。
おわりに
モノレールにはさまざまな利点がある反面、積載能力が小さい、速度が遅い、木寄せ・積み込み機能がない、などの課題もあります。
今後、機械自体のハード面の改善とともに、作業道開設困難地への敷設、既存機械との組み合わせ、既存道との組み合わせによる効率的な路網配置、集約的作業地での利用など、利点を活かした使い方をすれば可能性を秘めた機械だと言えます。

徳島県立農林水産総合技術センター 森林林業研究所 技術情報カード No.34(2002年2月)より
※徳島県立農林水産総合技術センター 森林林業研究所の了解を得て掲載しています。