多様な森林施業のために | 遷移と森林

はじめに

 近年の森林に対する県民の要請は、従来の木材生産機能のみならず、水源かん養や山地災害防止等の公益的機能、憩いの場としての利用や生物多様性の維持など多様化しています。これらの期待に応えていくためにも、多様な森林施業の展開が必要と思われますが、そのためにはどのような点に留意したら良いのでしょうか。

1.森林の遷移

 多様な森林施業の実施にあたっては、従来のスギ・ヒノキの人工林施業と比較して、「自然の力」に委ねるといった場面が多く出てくると思われます。そして自然の力をうまく利用するためには、自然の法則性を知っておく必要があります。その自然の法則の最も基礎的なものの一つに「遷移」があります。

 遷移とはある植物群落が時間の経過とともに、別の群落に変化していく現象をいい、安定した状態を「極相」といいます。火山噴出物上の遷移のように土壌及び種子等の繁殖源が存在しない状態から出発するものを一次遷移といい、森林の伐採跡地や耕作放棄地のように、土壌があらかじめ存在し、土壌中に植物の種子や萌芽・再生能力を持った茎や根が存在した状態から出発する遷移を二次遷移といいます。この場合、草本が優先する時代はごく短く、まもなく陽性の木本植物が優先する群落に移行し、最終的に陰樹で構成される森林(極相林)へ移行することになります。(図-1) (なお、土壌条件等が極端に違うために成立する極相を土地的極相と呼びます。)

 造林とは、二次遷移の出発点に目的とする樹種を植え込むことであり、人工林でも遷移は進行します。造林木を放置すると、前生樹の切り株から生じた萌芽や実生木、草本類との競争となり、多くの場合植栽木が被圧されるため、通常は植栽木の競争相手を下刈りや除伐で強制的に取りのぞきます。つまり人工林の下刈り等の初期保育は、遷移の進行を止め、目的とする特定の林木集団を維持しようとするものといえます。また、天然林施業は二次林の遷移を人為的に制御(促進または停止)することに他ならず、多様な森林施業を行うにあたって遷移の知識は最も重要なものの一つといえます。

 次に、造林後保育等の施業をしなかったため針広混交林化し、その後育成天然林施業を実施した林分について調査していますので、その概要について報告します。

2.針広混交林化した森林の実際

 調査地の概要を表-1に示します。調査は平成8年度に実施し平成13年度に再調査を行いましたが、今回は平成8年度の調査結果について報告いたします。なお、育成天然林施業の内容は有用広葉樹の稚樹をのこしながら下層木を中心に林内の除伐・整理をするといったもので、調査時 (H8) は施業実施後おおむね5年経過していました。

表1 調査地の概要
調査地 地況 構成樹種 立木密度
(本/ha)
備考
木沢村 標高:650m
斜面方位:N28°E
傾斜:36°
針葉樹:スギ
広葉樹:アカメガシワ他
 
814
3,014
【計3,828】
スギ役20年生
(H8調査時)
標準地面積
0.10ha


 図2に調査地内の樹種別の本数比率を示します。

 これを見てみると落葉広葉樹類がほぼ8割を占め、針広混交林化が進んでいることが分かります。広葉樹については約30種が確認されましたが、アカメガシワに代表される先駆的な樹種や陽性の樹種が多くを占め、遷移の初期の段階であることが分かります。また、エゴノキやリョウブについては萌芽が多く見られ、スギ植栽以前の林内に存在していたと思われます。

 なお、いわゆる有用広葉樹については全体の約13%を占めていました。 (有用広葉樹は、その目的によって変わってくるわけですが、今回はケヤキ、ミズメ、クリ、オニグルミとしました。)

 次に、図ー3に主要樹種別の樹高分布を示します。

 樹高の分布状況を見ますと、6~8mの区域を中心に樹木間の競争が激しくなっており、その一方で、競争から抜けだしつつあるもの、また被圧されかかっているものがある、といった状況と思われます。また、4m以下にスギの割合が多くなっていますが、これについては育成天然林施業の結果、スギが残されたためと考えられます。ところで有用広葉樹の代表といえるケヤキの分布状況ですが、8m以下の分布に限られているため、今後被圧されず十分に成長するかどうかの見極めが大切で、場合によっては除伐等の保育作業が必要となるでしょう。いずれにせよこれ以降の遷移の移り変わりが注目されるところですが、今回紹介した林分の再調査の結果については、本号で紹介したデータとの比較も含め、また、別の機会で報告したいと思います。

おわりに

 多様な森林施業を実施するにあたっては、対象林分の遷移の段階を把握するとともに、その後の遷移を予測しながら適切な施業を実施していくことが重要でそのことより、より少ない労力でより望ましい林型への誘導が可能になると思われます。

 徳島県林業総合技術センターでは今後も広葉樹林等の調査研究を進め、多様な森林施業の指標を得ていきたいと考えています。

徳島県立農林水産総合技術センター 森林林業研究所 技術情報カード No.33(2002年1月)より
※徳島県立農林水産総合技術センター 森林林業研究所の了解を得て掲載しています。

 

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2011年 10月17日 月曜日  |   関連タグ:
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