間伐材の大規模搬出技術

H型集材架線の概要

県内各地で間伐が急がれていますが、せっかく大きく育った木を林内に切り捨てるのは残念です。

細い木や玉切り材なら簡易な索張りで小規模に搬出することもできますが、40年生をこえる太い木や、枝の付いたまま全木で集材する作業には向きません。また残存木を痛めないような作業方法の工夫も必要で、搬出コストの削減には限界があります。

集材作業には、なるべく簡単な方法で低コストを目指すのと、逆に大規模に行うことで、経費単価を抑えるという2つの方向があります。

大規模架線は架設経費が高いので、間伐材の搬出には敬遠されてきましたが、高知県では間伐木の平均胸高直径が18cm程度でも採算が取れたという事例が報告されています。

それは、造船所などで使われている天井クレーンのように架線を張る集材方法です。
今回は、広範囲の面積を能率的に搬出することができるこのH型架線について紹介します。

H型架線の種類

1)エンドレスタイラーダブル式
エンドレスタイラー式架線を2列平行に架設し、双方の荷掲げ索を中央で連結してH型にします。

集材機(YD)には、巻きドラムとエンドレスドラムが2つづつ装備したものを使います。ロージングブロック(LB)の代わりにラジキャリのような自走式搬器を使えば集材作業が合理的になります。

2)ホイスチングダブル式
アベックキャレッジを使った架線を2列平行に架設します。集材機には4つのエンドレスドラムが必要になりますが、運転操作が簡単です。

リモコン繋留式の特殊搬器(JUST2)を使えば、エンドレス索(ELL)2つだけになるので、架設と運転が一段と楽になります。

3)3エンドレス3キャレッジ式
在来架線の応用ではなく、H型専用に考案された方式です。線の取り回しが複雑ですが、荷上げ索がV字にならず、フックも垂直に上下するので、特殊搬器を使わなくても能率的な作業ができます。

H型架線の特徴

H型架線は、まるで天井クレーンのように、荷掛けフックを任意の場所で垂直に上下できることが最大の特徴です。そのため搬出木で残存木を痛めることも少なくて済み、荷卸しの場所(土場)も自由に設定することができます。また横取り作業がないので内角の危険性も解消され、安全面でも優れます。

さらに本格的な全木集材作業ができるので、プロセッサーの高速処理能力が存分に発揮できることになり、総合的に高能率で低コストになります。

ただし、架線を高く張り上げる必要があるので、谷をはさんで向かい合った尾根に架設しなければならないなど、場所が制限されます。

また十分な搬出材積がなければ経費が割高になってしまうので、隣接する森林の所有者と協力したり間伐率を高くする検討も必要でしょう。

H型架線の架設

1)現場の条件
2本の主索は必ずしも平行である必要はなく、高低差があってもかまいません。ただし4隅の支柱はなるべく高い位置を選び、地形図で架線と地上高の関係や搬出材の揚程を確認する必要があります。
一般的に、主索長(水平距離)は1,000m以内とし、主索どうしの間隔は、300m程度が限界でしょう。

これでカバーできない場合は、架線の架け替えをします。横に移動する場合は、2本の架線のうち一方だけ架け替えれば済むので、比較的楽です。
なお、設計荷重を減らすためにも、あらかじめ葉枯らし乾燥を行うのが理想的です。

2)設計計算のポイント
従来式架線を2列設置するタイプは、2つの独立した架線として設計することができますが、それぞれの荷掲げ索にかかる荷重を最初に設定します。
2本の荷掲げ索(LFL)のなす角が120度以下であれば、従来どおり吊り荷と重垂の合計を荷重として計算できますが、もし地上高を確保するために高く張り上げる場合は、下の図と式で求めます。

なお3エンドレス3キャレッジ式は、3式の架線と考えて、中央から順番に設計します。

3)リードロープの引き回し
H型架線のリードロープは、かなりの長さが必要なので、一般には火薬銃やガス銃で数回に分けて飛ばす方法が使われますが、模型飛行機も便利です。

いずれも専門家に依頼することになり、気象条件を選びますが、人力より安全で短期間で済みます。
なおリードロープの経路を、4本の支柱をつなぐように大きく引き回せば、2本の架線の架設作業が同時にできて作業が合理的になります。

模型飛行機でのリードロープ引き回し

徳島県立農林水産総合技術センター 森林林業研究所 技術情報カード No.23(2001年3月)より
※徳島県立農林水産総合技術センター 森林林業研究所の了解を得て掲載しています。

 

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2011年 9月16日 金曜日  |   関連タグ:
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