広葉樹の光環境に対する適応性

キハダ、ケヤキ、コナラ、クヌギ、サクラの耐陰性

 最近、水源かん養※や環境保全機能等を高度かつ持続的に発揮できるような多様な森林整備が求められています。
(※水源かん養保安林(すいげんかんようほあんりん)は、森林法第25条第1項第1号に規定される水源のかん養を目的とした森林(保安林)。かん養(涵養)とは地表の水(降水や河川水)が帯水層に浸透し、地下水となることを指す。)

 このような背景の中、広葉樹の持つ多様性が注目され、一斉林や複層林の下層木として広葉樹が植栽されている事例が多くみられるようになりました。しかし、スギやヒノキなどの針葉樹と比べて広葉樹の樹種特性に関する研究は進んでいないのが現状です。

 徳島県林業総合技術センターでは、本県で有用とされる落葉広葉樹5樹種を用いて、寒冷紗を用いた人工被陰試験により樹種ごとの光環境に対する適応性を調査しましたので、その概要を報告します。

試験に用いた樹種

 試験材料には、本県において有用とされる代表的な落葉広葉樹であるキハダ、ケヤキ、コナラ、クヌギ、サクラの5樹種を用いました。

試験の方法

 写真のようにパイプを格子状に組み、遮光度の違う寒冷紗で覆い人工被陰区を設定します。

遮光度の違う寒冷紗で覆った人口被陰区

 寒冷紗の種類により、被陰区内の相対照度が3%、5%、50%、61%の4被陰区と裸地(相対照度100%)の合計5試験区を設定しました。相対照度とは、裸地すなわち何も遮へい物のない場所での太陽光の強さを100%とした場合の裸地に対する光の強さを示します。

 現実の林内では、よくうっ閉した林内において相対照度が5%以下になることが普通です。また、林内での相対照度が50%以上になるには、立地環境により違いますがおおよそ上層木の成立本数をha当たり200~300本以下にする必要があります。

 1試験区には1樹種につき20本計100本の実生苗を植栽し、1年間の成長量(樹高成長と直径成長量)と生存率を樹種ごとに調査しました。また、4被陰区のうち3%及び5%の2被陰区内の生存率については4年間の継続調査を行いました。

結果について


 図1に示すとおり樹高成長量は、クヌギとコナラを除いた3樹種で相対照度61%区が裸地に比べても高くなり、相対照度が高いほど成長量も大きくなるとは言えない結果になりました。また、図2に示すとおり、直径成長量は、キハダは樹高成長と同様に61%区での成長量が最も大きく、他の4樹種では相対照度が高いほど成長量も大きくなるという結果となりました。

 図3に示す生存率では、低照度(3-5%)の被陰区でクヌギ、コナラの枯死が多くほとんどの個体が枯死しました。50%以上の相対照度では、クヌギ、コナラにやや枯れがみられましたが、他の3樹種には枯れる個体が全くみられませんでした。

 また、3%及び5%区における4年間の継続調査では、クヌギ、コナラは1年目あるいは2年目までにほとんどの個体が枯れ、サクラは除々に枯れていき4年目にはすべての個体が枯れてしまいました。キハダも徐々に枯れていきますが、すべては枯死しませんでした。ケヤキは4年間ほとんど枯死する個体はなく、今回調査した5樹種の中では低照度での耐陰性が最も高い樹種と言えます。

 これらの結果については、現在、複層林下層木としてキハダやケヤキを植栽した林分を調査するなどして、現実林分での検討を行っています。

おわりに

 今回報告した5樹種の他にクスノキ、アラカシ、ウバメガシ、スダジイ、ヤブツバキの常緑広葉樹5樹種について同様な人工被陰試験を実施しましたので、別の機会で報告したいと考えています。また、徳島県林業総合技術センターでは今後もこれら広葉樹に関する試験を継続して行うことにより、広葉樹の樹種特性を解明していきたいと考えています。

徳島県立農林水産総合技術センター 森林林業研究所 技術情報カード No.5(1999年9月)より
※徳島県立農林水産総合技術センター 森林林業研究所の了解を得て掲載しています。

 

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2011年 9月26日 月曜日  |   関連タグ:
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