【実験】木の家は本当に暖かいのか
2011-3-28Tags: , このエントリをはてなブックマークに追加

徳島県林業総合技術センターで「木の家は本当に暖かいのか」という実験が過去に行われていたのでご紹介します。

木に囲まれた空間の暖かさ

-徳島すぎ内装材の快適性評価‐

 オフィスビルの多くは、部屋の床にPタイル、壁にはビニールクロスなどの化学製品を採用しています。しかしながら、このような室内は、冬季に足元が冷えるなど、快適とはいえないようです。その一方で、内装に木材を使った部屋は暖かいといわれています。そこで、木に囲まれた空間は本当に暖かいのかどうかを実際に測定することにしました。

1.測定個所

 測定個所は徳島市かちどき橋の林業センターです。このビルの各部屋の内装は、壁面がモルタル仕上げ、床にはビニールアスベストタイルを施行しています。最近このビルの5階に事務所を構えた「徳島県木の家づくり協会」は、床に徳島すぎ厚板30㍉の表面断熱処理材(床との間に30㍉の根太を施行)を施行し、壁には杉集成材(厚さ10㍉)と和紙クロスを貼っています。この部屋と隣室との保温性、快適性の違いを比較します。

2.快適性の評価


図1.PMVのスケール

 今回、暖かさばどの快適性を評価するにあたって、建築環境分野で使われているPMV値という温熱指標を採用することにしました。これは暖かさや寒さの感じ方を、+3(かなり暑い)から-3(かなり寒い)までの7段階に分けたものです。そして0の値が暑くも寒くもない状態、+0.5から-0.5の範囲が快適とされます。(図1)。

 PMV値は、コンフィメーター(INNOVA社製)で室内の温度、湿度、気流速度を測定して求めます。この場合ヒトの活動量や服装から代謝量(安静で1met)と着衣量(スリーピースで約1clo)を定め計算式に入力します。

3.ふたつの部屋の快適性

図2.二つの部屋の快適性(2/7暖房あり)
注)家づくり協会は11:00~11:10、隣室は11:30~11:40の測定値である
図3.二つの部屋の快適性
注)家づくり協会は暖房あり10:00~10:10 および暖房なし11:10~11:20、隣室は暖房あり10:30~10:40の測定値である。

 測定は、平成12年2月7日から8日の2日間で行いました。2月7日は平均気温7.1℃と比較的暖かい日でしたが、翌2月8日には冬型の気圧配置が強まり、小雪のちらつく肌寒い天候となりました。林業総合技術センターに設置している気象計では、2月8日の平均気温は3℃、最低気温-1.0℃を記録しました。

 図2は2月7日午前11時頃の二つの部屋の測定結果です。家づくり協会ではPMV値が-0.5から+0.5近くまで上昇しましたが、隣室では0を超えませんでした。

 図3は翌2月8日の午前10時頃の測定結果です。家づくり協会では0から+0.5の範囲内でしたが、隣室では-0.5を超えませんでした。つまり隣室はやや寒いレベルでした。さらに、家づくり協会について暖房を切った状態で測定したところ、値は中立値0に近づきました。つまり暑くも寒くもない快適な状態となりました。

4.床・壁の表面温度の影響

壁表面温度と作用温度の関係 (2/7)

注)家づくり協会(床:杉厚板、壁北面:和紙クロス、壁東面:杉集成材)
隣室(床:Pタイル、壁:モルタル)

 なぜ二つの部屋で快適性に差が生じたのでしょう。

 図4は床・壁の表面温度とその周辺の作用温度との関係を示したものです。作用温度とは、気温や放射熱度を考慮した総合指数で体感温度に近いものです。

 この日は2月8日に比べだいぶ暖かかったのですが、それでも家づくり協会と隣室との差がよくあらわれています。“木に囲まれた”家づくり協会では、床・壁の表面温度が高く、作用温度も高くなっていますが、”コンクリートで囲まれた”隣室は、床・壁の表面温度が低く、作用温度も低くなっています。。つまり、床や壁の冷たさが作用温度、すなわち体感温度に影響しているのではないかと推測されます。

5.おわりに

 今回二つの部屋の快適性に差がみられたのは、周囲の材料の表面温度が影響したためと考えられます。データをもっと蓄積する必要がありますが、このような方法で「木で囲まれた空間は暖かい」ということを数量的に実証していけば、オフィスビルや公共施設での木材利用がさらに進んでいくものと期待しています。

 また、家づくり協会では今冬ほとんど暖房を必要としなかったと聞きます。木材を内装に使うことで光熱費の差がどの程度生じるのか、今後、省エネ的観点からの調査も行って生きたいと考えています。

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