徳島杉の強度(上)
2011-1-14Tags: このエントリをはてなブックマークに追加

以下、徳島県林業総合技術センターの資料です。

徳島すぎの強度(上)~実大材強度試験の経緯

1.木材の強度
建築基準法施工令には木材の許容応力度(設計上許容される材料の強さ)が定められています。表1に各樹種の許容応力度を示しましたが、設計者は建築物の構造計算を行うとき、この値を用います。スギはベイマツよやヒノキより低い値が設定されているのがわかります。


表1 木材の繊維方向の許容応力度

実は許容応力度のもととなる木材の強さ(基準値)は、これまで無欠点小試験体という2~3cm角の小さなものから求められていました。ところが昭和50年以降にカナダで実大材強度試験が精力的に行われ、この基準値と実際の製品強度が必ずしも一致しないことが分かったのです。

このため、各国でも実大材の寸法による、木材の強度試験が行われ始めました。我が国でも昭和56年から3ヵ年間、徳島県のほか岩手、山形、静岡、奈良、島根が参加した共同プロジェクトが実施されました。そして10.5cm角のスギ正角の実寸法の強度試験(破壊試験)から、強度を推定するのにヤング係数が有効であること、曲げヤング係数が高いものほど曲げ強度が高くなっていることなどが分かりました。(図1)


図1 スギ正角の曲げヤング係数と曲げ強さ

ちなみにヤング係数とは材料の変形しにくさのことです。この数値が大きいほどたわみにくい材ということになります。つまり、たわみにくい材料ほど強い曲げ性能を持つという訳です。

2.中目材の構造的利用
徳島県の特に南部では、古くから杉が梁や桁等の横架材に使われてきました。経験的に杉が強いことが知られていたのです。ところが、先に述べたように杉材の強度的評価は低いものでした。

こうした中で、昭和59年に林業クラブ青年部(徳島すぎクラブ)がその強さを実証しようと、60~70年生の杉中目丸太(丸太の末口径18~32cm)から採材した平角材等124体を国立林業試験場に持ち込みました。このとき測定されたスギ平角(12cmx24cmなど)の曲げ強度と曲げヤング係数の平均値はそれぞれ419kgf/cm2、92.1tf/cm2で、いずれも建築基準法施行令及び日本建築学会で示された基準値(曲げ強度225kgf/cm2、曲げヤング係数70tf/cm2)を大きく上回りました。

杉でこのように大きな断面での実大強度試験は、全国で初めてでした。また、中目材については丸太材積に占める比率が大きいわりに用途が限られることから、どこの林業産地でも課題となっており、その意味からも画期的な試験であったといえます。


日本初めての杉梁材実大曲げ試験(昭和59年農林水産省林業試験場)

3 スギとベイマツの強度
その後、林業総合技術センターでは、昭和62年に、最大曲げ荷重20t、圧縮100tまでの強度試験ができる木材実大強度試験機を導入し、試験体制を整備することとなりました。そして徳島県下の各流域のスギで行った強度試験では、曲げ強度350kgf/cm2という平均値を得ました。(表2)


表2 徳島杉の強度試験結果(徳島県林業総合技術センター)
(注1)許容応力度は、強度下限値に安全率などを乗じて求められている。
(注2)変動係数CVとは、ばらつきを表し、標準偏差を平均値で除して求める。

他県でもこうした強度試験が行われ始め、大きな流れとなりました。全国21研究機関の実大材データは、木材学会でまとめられ、その分析結果から、①樹種を問わず曲げ強さを推定する最も有効なものはヤング係数であること、②スギについては節があるから弱いとは言えないことなどが示されました。

この成果をもとに、平成3年1月、「針葉樹の構造用製材の日本農林規格(JAS)」が新たに制定され、建設省ではこれに適合する製材の許容応力度を設定しました。

従来、ベイマツの強度は高く、スギの強度は低く見なされてきました。ところが、表3でおわかりのように、甲種構造材の1級では確かにベイマツの方が高くなっているのに対して、2級ではスギの方が高く設定されています。これは実大強度試験の結果、スギがベイマツに比べて節などの欠点に影響を受けにくいことがわかったからです。(続く)


表3 目視等級区分製材の許容応力度(H4.1.31建設省通達)

徳島県林業総合技術センター 技術情報カード No.8(1999年12月)より
※徳島県林業総合技術センターの了解を得て掲載しています。

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